コインで語る古代史 第4章6ローマ帝国・５代目ネロ帝の貨幣

コインで語る古代史第4章6ローマ帝国・５代目ネロ帝の貨幣

ローマ帝国の５代目皇帝”ネロ”（在位：５４〜６８年）はユリウス＝クラウディウス朝の最後の皇帝。母アグリッピナの手により、皇帝に選出される。治世の初めの五年間は師のストア哲学者セネカの補佐もあって善政をしいたが、次第に狂気を発し乱行が多くなる。６４年７月、ローマの大火が起こる。この大火は「ネロが新しい都市計画を思いついて自らに火をつけた」との噂が立つと、ネロはそれを打ち消すためキリスト教徒を放火犯にしたてあげて大迫害を行った。

さらに陰謀の疑いがあるとしてセネカを捕え死に至らしめた。

最後の数年はローマを離れ、ギリシャに渡り演劇や音楽に熱中するなど、完全に皇帝としての人望をなくし元老院も廃位を決定、ネロは追い詰められて６８年、自殺した。

ネロ帝は治世中、貨幣改革を行う。この改革は詳細は、金銀貨の量目減少を主とするものであり、アウレウス金貨は1/45ローマポンド（アウグストゥス帝の制定は1/42ローマポンド）すなわち約7.30gの金、デナリウス銀貨は1/96ローマポンド（アウグストゥス帝の制定は1/84ローマポンド）の銀で造られることになった。

またそれまで市民に非公開だった「徴税規則」を公表したり、徴税担当官の不正撲滅を行ったが、結局”徴税請負人”制度を撤廃することはできず、そして徴税担当官の腐敗も後をたたなかったと言われている。この改革は、価格騰貴の実態に合致させるための修正と言われているが結果的に極端な悪鋳と貨幣制度の崩壊が始まる画期的な出来事であったと考えられている。

ネロの時代に至って、帝政ローマの全コインについての完全な段階的貨幣システムが完成する。生産はローマ中心であり、西方ではリヨン、東方ではカエサリア（現カッパドキア）、アレクサンドリアが保管的作業を続けていた。芸術的、技術的水準も一応の頂点に達したと言われている。例としては、ネロ帝は少年時代の愛らしい顔とは違い、コイン上では牛のような太い顎の上に乗った、頭部の目は彫りが深く残忍性を偲ばせる写実主義の徹底さが見て取れる。

後５４〜後６８年　帝政ローマ　金貨
表面：月桂冠をつけたネロの肖像
裏面：ティベル川流域に新しく建設した港を表現か？

後５４〜後６８年　帝政ローマ　金貨
表面：月桂冠をつけたネロの肖像
裏面：伸ばした右手にパテラ（献酒盃）を持つサルス神の坐像。下部には＜SALVS（健在）＞の文字が打刻

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第4章7ローマ帝国・１３代目トラヤヌス帝の貨幣

【古代】コイン（貨幣）で語る古代史（ギリシア&ローマ）　入門編
第1章コイン誕生

 第2章1ギリシャ世界

 第2章2 アテナとフクロウ

 第2章3 イオニア、シチリア、コリントス貨幣

 第2章4 アケメネス朝ペルシア、パンティカパイオン貨幣

 第3章1アレキサンダー帝国

 第3章2アレキサンダー死後の時代

 第4章1古代ローマ帝国

 第4章2古代ローマ帝国・敵対強国カルタゴ貨幣

 第4章3古代ローマ帝国・ユリウス・カエサルの貨幣

 第4章4ローマ帝国建国・初代皇帝アウグストゥス貨幣

第4章5ローマ帝国・２代目ティベリウス帝の貨幣

 第4章6ローマ帝国・５代目ネロ帝の貨幣

 第4章7ローマ帝国・１３代目トラヤヌス帝の貨幣

 第4章8ローマ帝国・１4代目ハドリアヌス帝の貨幣

 第4章9ローマ帝国・２１代目カラカラ帝の貨幣

 第4章10ローマ帝国・コンスタンティヌス帝の貨幣

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【2-2】ローマの偉人が私達に伝えている大切なメッセージ　＜カエサル＆アウグストゥス＞
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【2-3】ローマの偉人が私達に伝えている大切なメッセージ　ネロ＆カラカラ帝
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